これからの眼科医療について

近年医学の進歩には著しいものがあり、日々新しい医療が生まれているといっても過言ではない。中でも眼科領域においては、あらゆる医学領域のなかで最も短期間に変貌しつつある部門である。例えばレーザー機器の導入、手術顕微鏡および手術機器の進歩、画像診断装置の普及など枚挙に暇ないが、他科との大きな違いはその様な先進医療機器が限られた大病院だけでなく、開業医レベルに広く普及していることである。また地域の基幹病院あるいは大学病院においては、異なったレベルの複数の医師が診察する形態を取らざるを得ないので、ともすれば医療内容に統一性を欠くことになりがちである。したがって眼科においてはいくつかの部門で臨床の最前線は個人クリニックにあるといえる。

我々が医療法人市岡眼科を開設するにあたり目標として掲げた事項に常に最先端、最良の眼科医療を提供することが挙げられる。最先端の臨床というものは最新の医療機器とある程度の知識があればさほど困難なものではない。しかし最良の医療というものは簡単ではない。患者さんが求めるものは人それぞれである。結果が良ければよい訳でもない。 Quality of Life という言葉があるが、医療従事者は常にこの事を念頭に置くべきである。例えば白内障がある患者さんが受診したとする。医学的には手術して白内障を取り除けば視力が向上することは明白である。しかしそこで考えるべきことはその患者さんの生活環境とご本人が本当に視力向上を望むか否かである。場合によってはかなり視力が不良であっても手術をしないことが喜ばれる場合もあり、その逆もある。医者は神ではなく患者さんと同じ人間である。患者さんと同じ視線に立たなければ良い医療はできない。現代医療はともすればそこから外れて行くことが多いように感じている。最新の医療を行いながら常に医療の原点を忘れない、これが我々の最大の目標である。